鍛金にまつわる道具~当金(あてがね)編~

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こんにちわ!

しばらくホームページリニューアルにともない、金工道具や過去作品についての紹介記事を中心にちまちまと載せていきたいと思います~

いままであまり深く触れてこなかった道具の話題について少し掘り下げようとおもいます。

今回は第一弾として、わたしの制作に欠かせない「当金(あてがね)」という道具の紹介です。


まずジャンルとしまして

工芸・・陶芸 漆 染織 金工 ガラスetc

金工(金属工芸)・・彫金 鍛金 鋳金

その中の鍛金という分野を中心に私は制作しています。

金属を鍛えると書きまして鍛金(たんきん)と読みます。その名のとおり金属をたたいて鍛えて形を作る技術です。

その時に主に使う道具が金槌当金の2種類です。

↓これが「当金(あてがね)」です。

↑似ているものでも、微妙に頭の形が違うのわかりますか?

「当金(あてがね)」とは!

鍛金の絞り技法に必要な鉄塊です。

金槌で金属板を打つ時に反対側で支えのようにして使用し、制作したい作品のアールなどによってさまざまな形の当金を必要とします。

既存のものは殆ど無く、作品に合ったものを自分で制作します。

↑このような鉄の棒たちのことを「当金」と呼びます。

大きいものから小さいもの、頭の形が平らなものから丸みのあるものまで当金の形に際限はなくあまりこれでなくてはいけない、といった縛りもそこまでありません。

この当金と金槌をものすごく沢山所有していないと満足に作品も制作できませんし、同じような形しか絞れません。

制作する作品に合わせて新たに当金をいちから作ったりもします。

職人さんレベルの方になると百本単位で所有しているらしいです・・!なんと。

ちなみにわたしはいまんとこ30本ちょっとです。うーん、マダマダ。

これからきっとちょこちょこ増えていくんだと思います。きっと。

当金はだいたいこんな感じで使います。

当金全然見えてない写真ですみません・・

当金の上に銅板をのせてその上から金槌で押さえるようにたたきます。

木台(当金を支える丸太)に差した当金にまたがってたたいたり、椅子に座ってたたいたりもします。使い方いろいろです。

こんな風に小上がりの畳の上で作業します。

わたしは作業上銅板をたたく時間が長いので、だいたい一日の殆どをこの畳の上で過ごします。

普通はコンクリートの上などに直接木台を置いて鍛金するようで、小上がりの上で鍛金するのは金沢だけらしいです。

東京の方の美大芸大の鍛金科はコンクリートでしたし、新潟の玉川堂を見学させてもらった時は畳でしたが小上がりではなかったです。

なぜか金沢美術工芸大学や金沢卯辰山工芸工房等の鍛金現場は畳小上がり(しかも高さ30センチ程)なので、これがあたりまえで過ごしてきたのでなんだか不思議です。誰がやりだしたんでしょうか・・近年私が一番気になっている事です。


ここまで鍛金道具としての当金をさらっと紹介しましたが、これらの道具を自分で作っていきます!

なぜ自分で作るかって、、あんま売ってないからです。もちろん全く売っていないわけではないのですがその数はものすごく少なく欲しい形にあまり出会いません。あと既製品は自分のよく使う形に合わなかったりで結局加工しちゃいます。オーソドックスな形のものなら金工道具専門店に少し出てます。

あと、買うとものすごく高くつきます・・。すべてを買って揃えるのは、なかなか厳しいものです。なぜならそういうお金のかかる初期装備揃えなきゃいけないのがだいたい駆け出しのお金のあまり無いころなので・・

もし、いまから金工作家を目指す方が見ていたら、アドバイスをひとつ・・

いまのうちにお金を貯めてください。

すごいリアルな言葉が出てしまったところで当金制作について紹介していきたいとおもいます!

闇雲に作ってもアレなので、まずはどういう形のものをどのサイズで制作するか等さらっと決めます。

わたしは学校や工房の共用のものをずっと使ってきていたので、このとき自分の当金はゼロの状態でしたので、自分が良く使う形を1年間くらい吟味していました。で、このとき制作したのは30本くらいです。

学校等の共用設備の時というのは何でも揃っているのでそれをすべて同じレベルで揃えるのはとても難しいので、最初は自分の作品で良く使用する当金の目星をつけておくのがベストかなっとおもいます。

↑当金の種類として、真っすぐなものを「ぶっ立て」曲がっているものを「への字」と呼びます!

工房にあった共用のよく使用する当金を参考にサイズ等を決めていきますよ~

共用の当金はどれも年季が入っております・・

ちょっと変わった形としてはこの通称「グリコ」っていう形もあります。

これはうちの大学には無かったのですが、東京藝大にある形なのかな?いきものの足や壺型の首などの細い部分をたたくのにめちゃくちゃ使えます。これも作りまーす!

当金のシルエットを写し、実物大の下絵などを描きます~

このへんの当金はかなり古い良いもので、使わせて貰ったのですが使い勝手も良かったです。

最近では使用感のいいものの形やサイズはメモっておくようになりました。

形を吟味し決定します!

実物大の下絵があるとやりやすいです。小さいものは描きませんでした。

ここでようやく材料の発注へ。ここまでが長かったですね、、

鉄材を使用します。だいたい太さと長さを決めて欲しい分を発注するのですが据え込む作業をするので少し長めに取ったりと地味に計算が面倒だった思い出が・・

こんなに太い鉄材余っても、普段の制作で使わないのでぴったりで計算しようと思ったら手間取りました。

一口に鉄材といっても当金作りには炭素鋼45Cを使用します。

炭素鋼・・鋼の一種で、鉄と炭素の合金

45Cというのは炭素(カーボン)が0.45パーセント入っているというものです。

わたしたちのような者は純銅・純銀や純鉄など加工性の良さを好んで素材として使用しますが、世の中に出回っている金属製品というのは実は殆どが合金です。混ざり気のない純金属というのは軟らかすぎるので強度が脆く工業製品には向きません。

特に鉄は軟らかい素材なので建物や橋の強度がいる部分に使用することができません。一般的にみなさんがいままで「鉄」だと思っていたものは実は「鋼」なのです。

鉄に炭素などを微量に混ぜることによって強度が増したものが「鋼」です。

わたしは作品の素材としては純度の高い軟らかい金属を使用しますが、炭素鋼で出来た金槌でガンガンと幾度となくたたかれる存在である当金はやはり長年使用する事を考えると鉄では強度に不安があります。そういうわけで当金と金槌などの道具は炭素鋼で制作します。

そして当金の制作現場はこんな感じです。

コークス炉と、アンビル、ハチの巣、金槌、ヤットコetcを準備しました。

すんごいガンガンたたくので音や振動が大きいため、このときは駐車場でやりました。

真冬の駐車場(in金沢)・・めちゃくちゃ寒くて修行みたいになるかと思いましたが、たたき始めたら暑すぎるくらいになりました。むしろこれは夏にやったらそれこそ心頭滅却修行みたいになるとおもいました。これは寒い時期にやると外気とのバランスでちょうど良いと思うので冬にやることを強くオススメします。

炉の中に鋼材を入れ、材料を赤めます。

普段の銅の制作の時は火にかけたあと急冷してから作業しますが、鉄は真っ赤の時にたたかないと冷めたらすぐ硬くなって作業が出来なくなります。「鉄は熱いうちに叩け」ということわざががありますがその言葉はこの鉄の性質からきているようです。刀鍛冶の方が赤めた鉄を打ってるところをテレビなどで見たことある人はいると思いますがようするにまぁあんな感じです。

作業はこんな感じでやります。この時は当金の頭とは反対の木台に立てるための四角錐の部分をたたいています。

頭の部分は自重で下に落として成形していくのでなんとかなりましたが、この四角錐の部分が大変でした・・

↓四角錐とはこの部分のことです

ほんとうに、このときばかりは男性の腕力に憧れました。わたしは女性の中では力のある方だと思っていますが、それでもなかなか太刀打ちできなかったです。いや、技術がないっていうのは勿論あるんですが純粋な力があればもっとたたけるのにな・・っておもいました。

ほんとうは一人ですべてをやるところを、力が足りず材料を支えてもらいながら両手で金槌を打ってなんとか事なきを得ました。鍛金の方って男性の方が多い理由をここで見た気がしました。。小柄な細腕の女性はできない作業なんだろうなと思いながらバリバリたたきました。

こっからはただただひたすらたたく!です。わたしはこれでも毎日金槌をふりまわしていたのに、、毎日筋肉痛でした。。

ボサボサになりながらガンガンにたたいている動画です。

途中からは少し要領を得てスピードアップできましたが最初の数本はこれ30本も作んの?マジで・・?って絶望してました。人間は慣れですね。これを毎日やっていたら上手くなるのかもしれませんが多分人生で数回しかやらないだろうな・・

大きい金槌でざっくり形をたたいたら、最後は小さい金槌で形を整えて完成です!

ここから地道な削りタイム。ただただひたすらグラインダーで表面を削り形を整えていく・・これが、数が多すぎてものすごく地道な作業でした。

そして完成です!

鏡面になるまで研磨しました~

ずらっと並ぶと壮観です。

これは達成感ありました~!いろいろなタイプを作ってみました。いままで使う中でもうちょっとこういう形ならいいのに、とか、この角度ならいいのに、とかを全部取り入れわたしが使いやすい道具になりました。

↑手前の方が「ぶっ立て」です。

↑手前の2本がスタンダートな「への字」です。

こんな感じで当金制作は完了しました。

購入したものを削って改良したりしたものや、あまりに太いものは外注で作ってもらったりもしましたが、殆ど自分で作りました。コストもかかりすぎず、良かったです!

いまとなって使っていてもう少し削りたいなぁとかも出てきましたが、またそういうのはおいおい調整していきながら改良を重ねていけば良いかなと、、

そして夢のマイ当金を手にしたのでした。

金槌は、大学の頃から自分のものを作るように教えられていたのでもともと自分のものでしたが、また金槌についても改めて載せたいと思います。

これを見てちょっとでも金工について知って頂けたら嬉しいです!

また、鍛金にまつわる道具の紹介記事も載せていきますのでおひまな時にでも覗いてください~

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